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狐「今からずっと、わたしがお姉ちゃんになってあげるよ」



 スレ主>>1のお話。
 姉が狐らしく、また弟は姉が狐だとは気付いていない。
 和やかさと微かな物悲しさが特徴で、本物の童話にすら見えてくる。
 諸文献からの引用や、狐に因んだネタなど、バラエティに富んでいる…が、
 携帯からの投稿で、一切発言をせず、淡々とお話を綴るそのミステリアスさに、
 「>>1は狐なんじゃね?」という噂が流れ…
 おや?神主さんが…


1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 05:09:57.92 ID:5FGuAdodO
姉「おはようごさいます。ふかぶかおじぎ」
弟「……ん」
姉「どうしたの」
弟「どなたですか?」
姉「お姉ちゃんだよ」
弟「ああ、そうだった」
姉「弟に忘れられちゃった。さみしい」
弟「ごめん、寝ぼけてたから。おはようございます、お姉ちゃん」
姉「おはようございます。ふかぶかおじぎ」
弟「ふかぶかおじぎ」

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 05:14:20.91 ID:5FGuAdodO
姉「おこづかいあげる。大事に使ってね。おいしい油揚げなんかに使ってね」
弟「ありがとう」
姉「いい事に使ってね。悪い事に使っちゃだめ」
弟「うん」


弟「……あれ? 葉っぱだ。何枚も……」
弟「どうして、財布の中に葉っぱが入ってたんだろう」

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 05:24:44.30 ID:5FGuAdodO
姉「おっきいおべんとが弟の。かわいいおべんとがお姉ちゃんの」
弟「稲荷寿司だらけだ」
姉「頑張っていっぱいつくった。おいしいおべんとだよ」
弟「味見したんだね」
姉「ばれた」
弟「口に沢山、ごはん粒が付いてるから」
姉「ほんとだ。……けぷ」
弟「お昼ごはんも稲荷寿司で大丈夫?」
姉「だいじょぶ」

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 05:32:30.90 ID:5FGuAdodO
姉「さあ、一緒に学校へ行こうよ」
弟「お姉ちゃんと僕、おんなじ学校だったっけ?」
姉「うん。でも、前は茨海ってとこだった」
弟「ばらうみ?」
姉「そこの担任の先生が、弟と一緒の学校へ行っていいよって言ってくれたの」
弟「そうなんだ」
姉「前の成績はあんまり良くなかったけど、弟と一緒の学校では頑張る」
弟「えらいね、お姉ちゃん」
姉「えへへ」

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 05:43:33.13 ID:5FGuAdodO
姉「あーんして」
弟「恥ずかしいよ。姉弟一緒にお弁当食べてる人なんていないよ」
姉「弟は学校だと冷たいね。屋上には誰も来てないんだから、あーんしないとだめ」
弟「あ、あーん」
姉「もぐもぐ」
弟「……あ、あれ? 食べさせてくれるんじゃないの?」
姉「弟がかわいいから、ついだました」
弟「……やめてよ、かわいいとか言うの」
姉「はい、今度は食べさせてあげる。あーんして」

16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 05:55:49.66 ID:5FGuAdodO
弟「ただいま」
姉「おかえりなさい。ふかぶかおじぎ」
弟「ふかぶかおじぎ」
姉「おやつをどうぞ」
弟「あ、これはこれは。お饅頭ですか」
姉「普通のお饅頭です。石や馬糞なんかじゃないのです」
弟「? 当たり前でしょ?」
姉「でも馬糞饅頭って名前なのです。ややこしいのです」
弟「ほんとだ」
姉「お茶もどうぞ。決して馬のおしっこなんかではないのです。緑茶なのです」
弟「……ジャスミン茶だったよ?」
姉「引っ掛けでした。やーい」
弟「でもおいしい。やーい」

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 06:07:53.03 ID:5FGuAdodO
弟「お姉ちゃん!」
姉「しー。夜中におっきな声を出しちゃ、だめ」
弟「ごめんなさい」
姉「それで、なぁに?」
弟「あの、障子越しにお姉ちゃんを見たら、まるで尻尾が生えてたみたいに見えたんだ……」
姉「それが怖かったの?」
弟「ううん。ただ、びっくりして」
姉「そう。……良かった」
弟「月が見えるね。障子を開けたから」
姉「……お月さま、今日はちょっと綺麗すぎるよね」

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 06:28:31.57 ID:5FGuAdodO
弟「お姉ちゃん、もうお風呂入った?」
姉「……う、うん。もう入ったよ」
弟「こら、嘘つき」
姉「やだー。お姉ちゃんお風呂きらーい」
弟「だめ。ちゃんと入って」
姉「きらーい」
弟「ほら、水に浮かぶアヒルさんだよ。アヒルさんは好きだよね」
姉「うん、アヒルさんは好きだよ。でもお風呂はきらいです」
弟「動物じゃないんだから」
姉「……弟が体を洗ってくれるなら、お姉ちゃんは喜んでお風呂入るよ?」
弟「弟を試すような事言わないの。はい、良い匂いのするシャンプーだよ」
姉「……終わったら髪をドライヤーで乾かしてくれる?」
弟「うん」
姉「やった! じゃ、いってきます! ざっぱーん!」
弟「服脱いでよー」

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 06:42:41.14 ID:5FGuAdodO
姉「おいしい、おいしい」
弟「お姉ちゃん、映画館は映画を観るところ。うるさいからポップコーンはもうだめ」
姉「……ごめんなさい」
弟「……」
姉「あっ、男の人と女の人がちゅーしたね」
弟「……」
姉「お姉ちゃんも弟とちゅーしたいな」
弟「……すぴー」
姉「寝た振りは、だめ。映画館は映画を観るところ」
弟「……す、すぴー」
姉「そうだ。今ちゅーしていい?」
弟「……だめ」
姉「ちゅーのまねっこ」
弟「だーめ」

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 07:42:45.29 ID:5FGuAdodO
姉「けほっ、けほっ」
弟「お姉ちゃん、風邪の具合はどう? 部屋に入るよ?」
姉「だめ」
弟「部屋に入らないと看病出来ないよ」
姉「絶対だめ。弟が入ったらお姉ちゃんは出てく」
弟「稲荷寿司は?」
姉「食べる」
弟「じゃあ僕を部屋に入れてくれないと」
弟「お姉ちゃんのお部屋、すっごく汚いの。ぐちゃぐちゃなの」
弟「そんなの気にしないよ。風邪が治ったら一緒に片付けようね」
姉「……ごめんなさい。お姉ちゃん、いつものお姉ちゃんじゃないから、弟に見せたくないの」
弟「そっか。じゃあ稲荷寿司はここに置いとくから」
姉「うん、うん」
弟「何か困った事があったら言ってね」
姉「ありがとう。ほんとにありがとう」
弟「いいからいいから」
姉「ふかぶかおじぎ」
弟「ドア越しだから見えないよ。おじぎは後にして寝てて」

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 10:01:19.69 ID:5FGuAdodO
姉「転んじゃった。膝をすりむいちゃった」
弟「えっ。救急箱、救急箱」
姉「消毒のお薬は染みるからきらいです」
弟「わがまま言わないの」
姉「きらいだもん。それにこんなの舐めれば治りますよーだ。ぺろぺろ」
弟「舌が届いてないよ」
姉「……うう。ねえ弟、お姉ちゃんは大好きな人と傷の舐めっこしたいな」
弟「僕の代わりに消毒液を染み込ませた綿棒さんが舐めてくれるってさ。
 ほら、ちょっとだけ我慢」
姉「いたた。綿棒さんもっと優しく」

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 10:13:56.05 ID:5FGuAdodO
姉「おっきな鳥さんだ。今日の晩ごはんは鶏さんが入ったお稲荷さんにしようかな」

姉「こわーい犬さんだ。そっと通り過ぎ……ばれた。
 ごめんなさい。何にもしないから、どうか吠えないでください」

姉「あっ、弟だ。せーの……だーい好きっ」
弟「勢いつけてから抱きつかないでー」
姉「さっき犬さんに吠えられた。こわかったよ」
弟「よしよし」

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 10:40:54.74 ID:5FGuAdodO
弟「四月一日は、他人を傷付けない嘘なら何回でも言っていい日なんだよ」
姉「他人を傷付けない嘘?」
弟「うん。例えば……、おいしいお菓子をいっぱい買って来ました!」
姉「うわーい」
弟「お姉ちゃん独りで食べて!」
姉「えっ……さみしい」
弟「やっぱり二人で平らげよう!」
姉「嬉しい!」
弟「というわけで、僕は今からたくさんお菓子を買って来ます」
姉「嘘をホントにしちゃうんだー」
弟「別に、嘘ばかり言う日じゃないから」
姉「すごいね。お姉ちゃんは面白い嘘をつく事ばっかり考えてたのに」

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 11:17:04.10 ID:5FGuAdodO
姉「勉強ばっかりしてちゃ、だめ」
弟「世間の流れとは正反対だね、お姉ちゃんの教育方針は」
姉「勉強ばっかりしてたら勉強しか出来ない人になっちゃうんだよ。お姉ちゃんと遊ぼ」
弟「いいよ。何して遊ぶ?」
姉「あの機械」
弟「ゲーム?」
姉「頑張ったけど遊び方が分かんなかった。お姉ちゃんにゲーム教えて」
弟「じゃ、簡単なソフトから練習しようか」
姉「弟に教えて貰ったら毎日ゲームするの」
弟「でも、いつもゲームばっかりしてるとだめだよ」
姉「お姉ちゃんはお稲荷さん作れるもん。ゲーム以外も出来るもん」

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 11:28:13.11 ID:5FGuAdodO
姉「せんたっき、ぐーるぐる。ふしぎ」
弟「蓋を開けっ放しにしてちゃ危ないよ。洗濯機の」
姉「ぐーるぐる。ぐるんぐるん」
弟「こら、手を入れないの。だめ」
姉「……」
弟「蓋閉めるよ」
姉「……あ、そうだ。洗剤とじゅーなんざい」
弟「忘れちゃってた?」
姉「忘れちゃってた」

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 12:10:22.11 ID:5FGuAdodO
姉「……掃除機、かけるの?」
弟「かけるよ? 何で?」
姉「お姉ちゃん、一時間くらいコンビニ行きたいな」
弟「だめ。掃除を手伝ってください」
姉「やーだー。掃除機の音やーだー」
弟「スイッチ入れるよ。かちっ」
姉「うわー! じたばたじたばたがちゃんがちゃんがちゃーんぱりーんどがっ。あいたた」
弟「かちっ」
姉「……テーブルの角に頭をぶつけて、タンスの角に全ての小指をぶつけました」
弟「床に物が散乱しました」
姉「だから掃除機はやだって言ったのに。ふかぶかおじぎしつつ文句」
弟「箒とちりとりを探さないと。どこだっけ」
姉「とりあえず、一番最初に掃除機を片づけましょう」
弟「そうしましょう」

89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 13:49:14.08 ID:5FGuAdodO
姉「ね、かっこいいマフラーとか手袋とか、欲しくない?」
弟「もう三月だから、今はいいよ」
姉「今からでも、ちょっとの間なら巻いたり嵌めたり出来るよ。欲しくない?」
弟「欲しくな……欲しい、かな。やっぱり」
姉「そっか。えへへ、これあげる。編んだの。マフラーと手袋と帽子」
弟「……すごいね。ありがとう」
姉「こっちこそ、褒めてくれてありがとうございます。ふかぶかおじぎ」
弟「ふかぶかおじぎ」


弟「……あれ?」
弟「さっきまではマフラーと手袋と帽子だったのに、今はもつれて絡まった毛糸になってる……」
弟「編み方が悪かったんだな、きっと」

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 14:09:29.72 ID:5FGuAdodO
姉「この葡萄、きっと酸っぱいからみんな食べていいよ」
弟「……酸っぱいんだよね? やだよ」
姉「違うの。きっと、酸っぱいの」
弟「きっと?」
姉「きっと」
弟「……いただきます」
姉「召し上がれー」
弟「あ、これすごく甘い。お姉ちゃ……あれ、どこ行った」


弟「よく分かんないけど、全部食べていいって事かな」
弟「でも半分残しておこう」

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 14:41:39.07 ID:5FGuAdodO
姉「弟ー、おひなさま飾るの手伝ってー」
弟「……わ、すごい。何人官女? 何人囃子?」
姉「三十人官女! 五十人囃子! 右大臣に左大臣にまんなか大臣!」
弟「五十人囃子なんてオーケストラみたいだね。こんなすごいおひなさまが、この家にあったんだ……」
姉「あったのですよ。さあ、飾ろう。お姉ちゃんはすぐお嫁に行く気はないですが」
弟「うわー……。あれ? お内裏さまの顔、どこかで見た事ある」
姉「弟に似てるね」
弟「お雛さまは?」
姉「あれー、こっちはお姉ちゃんに似てるねえ」
弟「……偶然?」
姉「えへへー。白酒で酔えばそんな事気にならなくなるよ。えへへー」
弟「あはは。雛祭りの準備、楽しい?」
姉「すっごく楽しい!」

112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 19:07:21.72 ID:5FGuAdodO
ご注文はお決まりですか?

弟「すみません、きつねうどんください」
姉(……きつねうどん?)
弟「お姉ちゃんは何食べるの?」
姉「……えっ?」
弟「お姉ちゃんもきつねうどん食べる?」
姉「え、あ、あのっ」
はい。
姉「きつねうどんって何が入ってるうどんでしょうかっ」
きつねうどんですか。油揚げとねぎと、かまぼこが入ってますよ。
姉「……それだけ?」
あ、あとお肉が少し。
姉「お肉!」
牛肉にちょっと味をつけたものです。
姉(……良かった。狐は入ってない)
弟「お姉ちゃんは油揚げ好きだよね」
姉「うん。わたしもきつねうどんください!」

123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 19:54:11.31 ID:5FGuAdodO
姉「にわとりのまね。こけこっこ、こけこっこ」
姉「さかなのまね。ぴちぴち、ぴちぴち」
姉「りんごのまね。おいしいよ、おいしいよ」
姉「弟のまね。お姉ちゃん、お姉ちゃん」

弟「わ、僕がもう一人いる!」
姉「わ、見つかった。これはまずい。ぴんち」
弟「ドッペルゲンガーだ!」
姉「こんにちは。ふかぶかおじぎ」
弟「あ、こんにちは。ふかぶかおじぎ」
姉「弟が頭を下げているうちに、さようなら。また会いましょう」
弟「……あれ、僕がいない。どこ行った」

姉「ただいまー」
弟「あ、お姉ちゃんが帰って来た。お姉ちゃん、僕ドッペルゲンガー見たよ」
姉「すごーい」

132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 20:18:18.45 ID:5FGuAdodO
姉「〜〜♪」
弟「お姉ちゃんって歌上手いね」
姉「えへへ。そう?」
弟「カラオケしに来て良かったね」
姉「うん。よかった」
弟「でもお姉ちゃんの点数、いつも50点くらいだね。おかしいな、こんなに上手いのに」
姉「点数なんてお姉ちゃんはどうでもいいよ。次は弟のばーん」
弟「よーし」
姉「ひゅーひゅー」

135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2008/03/01(土) 20:34:48.08 ID:5FGuAdodO
弟「ふぁくしょっ」
姉「わ、でっかいくしゃみ。だいじょうぶ?」
弟「うん。でもさっきから、ふさふさしたもので鼻先をくすぐられてる気がするんだ」
姉「ふさふさしたもの? ふふふ」
弟「見当たらないよね、ふさふさしたもの」
姉「ふさっ」
弟「ふぁくしゅっ」
姉「ふさっ、ふさっ」
弟「ふぁくしょっ、ふぁくしゅっ」
姉(今は隠してるけど、ふさふさしてるのは自慢のしっぽ。ふふふ)
弟「おかしいな」
姉「おかしいね」

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